Daily Conversation · Section 1

新幹線で隣に座る人

最近うれしかったのは、新幹線で隣に座ったのが 四十代の男だったことだ。

Level: N2 · 36 sentences

Transcript

  1. 最近うれしかったのは、新幹線で隣に座ったのが
  2. 四十代の男だったことだ。
  3. わたしだって、人並みに中年男は嫌いだ。
  4. 以前は、隣に女が座ってくれることを希望していた。
  5. 新幹線に乗るときは、たいてい仕事をしようと思っているから、
  6. 気になるような女が隣に座ったら、
  7. 仕事に身が入らないはずだ。
  8. いいかえれば、仕事をしなくてすむはずだ。
  9. だが実際には、そういう希望が実現したことはほとんどない。
  10. 悪いことに、世の中には女以外の人間も存在しており、
  11. 中には、わたしの甘い夢を打ち砕くような人間もいる。
  12. 一番多いのは、前後の席で騒ぐ子どもである。
  13. 子どもの声は大きいのは分かる。
  14. 生物学的にいっても、
  15. 万一の場合に親の注意を引くような声を出す必要があるのだ。
  16. だが、隣に親がいるのになぜ大きい声を出す必要があるのか。
  17. 周りの乗客に迷惑をかけるために、大きい声をもっているとしか思えない。
  18. 子どもが近くにいるときは、まず仕事にならない。
  19. 何よりも、ぐっすり眠れない。
  20. そういう経験が何回も重なり、わたしは喫煙車両に座ることにした。
  21. 子どもは少ないから最悪の事態は避けられ…はずだった。
  22. 最初に喫煙車両に乗ったとき、
  23. どこかの体育会系の大学生の団体が周りを取り囲むように座り、
  24. 子ども以上に大きい声で騒ぎまくった。
  25. 次に乗ったときは、高齢の男が隣に座った。
  26. 老人なら騒ぐ元気もあるまいと思ったが、
  27. 老人は腰を下ろすなり、降りるまでの数時間、
  28. 途切れることなく、激しいせきをし続けた。
  29. 風邪なのか、肺ガンなのか知らないが、
  30. 今にも倒れそうで気が気でなく、
  31. 仕事どころではなかった。
  32. この経験の後、わたしは甘い希望を捨てた。
  33. 考えてみれば、周りに暴力団の団体が陣取る可能性もあるのだ。
  34. そういう事態に比べれば、中年男は歓迎すべき隣人だ。
  35. 中年男でよかった。
  36. 到着までの四時間、ぐっすり眠ることができた。