Daily Conversation · Section 1
新幹線で隣に座る人
最近うれしかったのは、新幹線で隣に座ったのが 四十代の男だったことだ。
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Transcript
- 最近うれしかったのは、新幹線で隣に座ったのが
- 四十代の男だったことだ。
- わたしだって、人並みに中年男は嫌いだ。
- 以前は、隣に女が座ってくれることを希望していた。
- 新幹線に乗るときは、たいてい仕事をしようと思っているから、
- 気になるような女が隣に座ったら、
- 仕事に身が入らないはずだ。
- いいかえれば、仕事をしなくてすむはずだ。
- だが実際には、そういう希望が実現したことはほとんどない。
- 悪いことに、世の中には女以外の人間も存在しており、
- 中には、わたしの甘い夢を打ち砕くような人間もいる。
- 一番多いのは、前後の席で騒ぐ子どもである。
- 子どもの声は大きいのは分かる。
- 生物学的にいっても、
- 万一の場合に親の注意を引くような声を出す必要があるのだ。
- だが、隣に親がいるのになぜ大きい声を出す必要があるのか。
- 周りの乗客に迷惑をかけるために、大きい声をもっているとしか思えない。
- 子どもが近くにいるときは、まず仕事にならない。
- 何よりも、ぐっすり眠れない。
- そういう経験が何回も重なり、わたしは喫煙車両に座ることにした。
- 子どもは少ないから最悪の事態は避けられ…はずだった。
- 最初に喫煙車両に乗ったとき、
- どこかの体育会系の大学生の団体が周りを取り囲むように座り、
- 子ども以上に大きい声で騒ぎまくった。
- 次に乗ったときは、高齢の男が隣に座った。
- 老人なら騒ぐ元気もあるまいと思ったが、
- 老人は腰を下ろすなり、降りるまでの数時間、
- 途切れることなく、激しいせきをし続けた。
- 風邪なのか、肺ガンなのか知らないが、
- 今にも倒れそうで気が気でなく、
- 仕事どころではなかった。
- この経験の後、わたしは甘い希望を捨てた。
- 考えてみれば、周りに暴力団の団体が陣取る可能性もあるのだ。
- そういう事態に比べれば、中年男は歓迎すべき隣人だ。
- 中年男でよかった。
- 到着までの四時間、ぐっすり眠ることができた。