JLPT · JLPT 3

愛情と束縛のパラドックス

愛情という感情について 少し掘り下げて、考えてみたいと思います。

Level: N1 · 33 sentences

Transcript

  1. 愛情という感情について
  2. 少し掘り下げて、考えてみたいと思います。
  3. 愛情には、相手を尊重する気持ちがありますね。
  4. 相手に不快な思いをさせたくないという配慮です。
  5. しかし、それと同時に
  6. 相手を束縛せずにはいられない側面をも持ち合わせている。
  7. これは愛情の相克とも言えるかもしれません。
  8. 「あなたを愛しているがゆえに、こうあってほしい」
  9. 「大切なあなただからこそ、これはやめてほしい」
  10. こうした願望が生まれるのは至極当然のことでしょう。
  11. むしろ、そうでなければ愛情とは呼べまい。
  12. つまり、相手への関心が深まれば深まるほど、
  13. 無意識のうちに、相手をコントロールしたいという欲求が湧き上がる。
  14. これは人間の心に潜むある種の宿命なのかもしれません。
  15. さて、他人にコントロールされるというと
  16. 押し付けがましい窮屈だといった
  17. マイナスイメージが先行しがちです。
  18. ですが、必ずしも不快なものとは限らない。
  19. 例えば、私が本気で陶芸家たらんと志し、
  20. 尊敬してやまない作家に師事したとします。
  21. 私は師匠からの指導はもとより
  22. あれこれ命じられることや、
  23. 時には無理難題を突きつけられること
  24. 罵声を浴びせられることにすら、
  25. 充実感や喜びを覚えるのではないでしょうか。
  26. 尊敬する師匠に導かれること、
  27. そのコントロール下に身を置くことが、
  28. ひたすらに喜ばしく感じられるはずです。
  29. このような関係性は
  30. おそらく、アスリートとコーチの間にも見られます。
  31. あるいは、映画監督と俳優との間においても、
  32. 同様の図式が成立しうるでしょう
  33. 信頼関係あってこその心地よい支配と言えるのかもしれませんね。