Daily Conversation · Section 2

挨拶という儀式

一ヶ月に及ぶ、長期出張を終え、 久しぶりに会社のデスクに戻った。

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Transcript

  1. 一ヶ月に及ぶ、長期出張を終え、
  2. 久しぶりに会社のデスクに戻った。
  3. 窓から差し込む光は以前となんら変わらぬ光景を映し出していた
  4. しかし、同僚たちとの間には、
  5. 目には見えない微妙な隔たりを感じずにはいられなかった。
  6. ​「お久しぶりです」、という言葉を交わす。
  7. その一言をもって、希薄化した関係が元の濃度に還元されていく。
  8. ふと、チンパンジーの挨拶行動を思い出した。
  9. 彼らは離合集散を繰り返す社会に生きる。
  10. ゆえに、挨拶が極めて重要な意味を持つ。
  11. 長い旅から戻った仲間は
  12. 挨拶をすることで、再び群れに受け入れられるのだ。
  13. 人間社会における挨拶も、その本質において何ら変わりはないのだろう。
  14. われわれは時間的・空間的な隔たりを埋めんがため、
  15. 「おはよう」や「おやすみ」といった言葉を交わす。
  16. 睡眠という相互認知の遮断でさえ、
  17. 人間関係をわずかに疎遠にするきらいがある。
  18. 挨拶とはその疎遠感を払拭し、
  19. 関係性を再構築するための儀式に他ならない。
  20. これは閉鎖的な日本ザルの社会には見られない、
  21. 流動的な社会ならではの知恵なのだろう。
  22. 挨拶をめぐる考察は人間関係の根幹に触れるようで興味深い。
  23. PCの電源を入れると、
  24. 隣の席の佐藤さんがコーヒーを差し出してくれた。
  25. ​「お疲れ様。大変だったでしょう。」
  26. そのなにげない一言と挨拶が、
  27. 私を再びこの「群れ」の一員としてくれた。
  28. 挨拶は心のチャンネルを開く鍵なのだと、
  29. 私は改めて、深く実感した。