Business Japanese · Section 2

「送信」ボタンの重み

パソコンの画面を前に僕はため息をついた。 来週、新しい部長と出張に行くことになっている。

Level: N2 · 23 sentences

Transcript

  1. パソコンの画面を前に僕はため息をついた。
  2. 来週、新しい部長と出張に行くことになっている。
  3. その部長というのがなかなかの曲者らしい。
  4. 今回の出張において、僕の評価が決まるかもしれない。
  5. 重要な取引先であらA社を訪問する予定だ。
  6. この機会に生産ラインを拝見したい。
  7. そう部長から指示されたものの、簡単な依頼どころではない。
  8. 先日の契約に際し、当方はかなり無理な注文をしたからだ。
  9. それにもかかわらず、A社は見事に対応してくれた。
  10. その恩があるだけに頼みづらい。
  11. しかし、これも仕事である以上やらざるを得ない。
  12. 僕はキーボードに向き直った。
  13. 「拝啓、貴社ますますご盛業のことと…」
  14. 一文字ずつ、丁寧に言葉を選ぶ。
  15. 部長も同行するという点を強調し、
  16. 相手にとってのメリットも匂わせる。
  17. つきましては、ご都合のよい時間を…
  18. 文面を何度も確認する。
  19. 敬語の使い方は間違っていないだろうか。
  20. 失礼な印象を与えはしないだろうか。
  21. スケジュールの都合上、返信の期限も設定せざるを得ない。
  22. 「送信」ボタンの上で指が止まる。
  23. 深呼吸一つ、僕はクリックした。