Folk tales · Section 2

森の教え

夏休みのある晴れた日、 少年ケンジは裏山へ向かった。

Level: N2 · 33 sentences

Transcript

  1. 夏休みのある晴れた日、
  2. 少年ケンジは裏山へ向かった。
  3. 目的はカブトムシを捕まえることだった。
  4. 祖父の忠告があったものの、彼は一人で森の奥へ進んだ。
  5. 珍しい蝶を見つけ、夢中になって、追いかけているうちに、
  6. いつのまにか道を見失っていた。
  7. 最初はたいしたことないと思った。
  8. すぐ戻れるだろうと、高をくくっていたのだ。
  9. しかし、景色はまったく見覚えがなかった。
  10. 太陽の位置も分からなくなっていた。
  11. カブトムシどころか、自分のいる場所さえ定かではなかった。
  12. 不安が胸をよぎった。
  13. 大声で叫んでみたが、返ってくるのは自分の声だけだった。
  14. 周囲の木々が、まるで自分を監視しているかのようだった。
  15. 自然のきびしさに対して、
  16. 彼は自分の無力さを痛感した。
  17. 泣き出したい気持ちを抑えざるを得なかった。
  18. その時、祖父の言葉を思い出した。
  19. ​「道に迷ったら、沢を探せ」と。
  20. 沢は必ず低い方へ流れるからだ。
  21. 彼は耳をすませた。
  22. すると、かすかに水の音が聞こえた。
  23. なるほど、これが希望というわけだ。
  24. 音のする方へ必死に歩き始めた。
  25. 足は疲労で、重かったものの、心には小さな光がともっていた。
  26. やがて、目の前に小川が現れた。
  27. 彼はその流れにそって、下がることにした。
  28. どれくらい、歩いただろうか。
  29. 見慣れた橋が見えてきた。
  30. それは村の入り口にある橋だった。
  31. 安堵のあまり、その場に座りこんでしまった。
  32. 遠くから、祖父が彼を呼ぶ声がした。
  33. この経験を通して、彼は自然を敬う心を学んだのだった。