Folk tales · Section 1

森の精霊と古い木

昔々、ある深い森の奥に、 樹齢千年を超える楠の古木があった。

Level: N1 · 36 sentences

Transcript

  1. 昔々、ある深い森の奥に、
  2. 樹齢千年を超える楠の古木があった。
  3. その木は「森の主」とあがめられ、
  4. 神聖な存在と見なされていた。
  5. 木には小さな精霊たちが宿っており、
  6. 森の平和を静かに守っていた。
  7. 精霊たちの姿は、心が清い者にしか見えない。
  8. ところがある日、町の役人たちがやって来て、
  9. 森を開発する計画を発表した。
  10. 計画によれば、この古木も伐採される運命だった。
  11. それを知った精霊たちは、大いに悲しんだ。
  12. 彼らは何とかして木を守ろうと決意した。
  13. まず、作業員たちの道具を隠してみたものの、
  14. 人間たちはすぐに新しいものを持ってきた。
  15. 次に、夜中に不思議な音を立てて脅かしたが、
  16. それも効果は一時的なものに過ぎなかった。
  17. 人間たちの欲望は、精霊の警告を上回っていたのだ。
  18. 作業を中止するどころか、
  19. 彼らはさらに大きな機械を持ち込んだ。
  20. この神聖な木をめぐって、対立は深まる一方だった。
  21. 精霊たちは思い悩んだ末に、最後の手段を取らざるを得なかった。
  22. それは、森全体に巨大な幻を見せることだった。
  23. 翌朝、役人たちが森に入ろうとすると、
  24. そこには道がなくなっていた。
  25. 進んでも進んでも、同じ場所に戻ってきてしまう。
  26. そればかりか、木々がまるで生きているかのように動き、
  27. 彼らの行く手を阻んだ。
  28. 「これは森の呪いに違いない」
  29. 人間たちは恐怖のあまり、逃げ出してしまった。
  30. ついに、開発計画は白紙に戻された。
  31. 精霊たちの知恵が、古木を救ったのである。
  32. 森には再び静寂が訪れた。
  33. 精霊たちは、古木の枝で安堵のため息をついた。
  34. この出来事以来、
  35. 人々は森を恐れると同時に、敬意を払うようになったという。
  36. 自然を尊重することの大切さを、精霊たちは静かに教えてくれたのかもしれない。