Folk tales · Section 1
雪女
むかしむかし、ある雪深い村に、茂吉という名の若者がおりました。 彼は腕のいい猟師でしたが、
Level: N2 · 36 sentences
Transcript
- むかしむかし、ある雪深い村に、茂吉という名の若者がおりました。
- 彼は腕のいい猟師でしたが、
- ある冬の日、山でひどい吹雪に見舞われました。
- 師匠と共に、小さな小屋へ避難したものの、
- 吹雪は一向に収まる気配がありません。
- その夜、小屋の戸が静かに開きました。
- そこには、雪のように白い着物を着た、
- 息をのむほど美しい女が立っていました。
- 女は師匠に白い息を吹きかけると、
- 師匠はたちまち凍りついてしまいました。
- 次に女は茂吉の方へ向き直りました。
- 茂吉は死を覚悟せざるを得ませんでした。
- しかし女は、こう言いました。
- 「お前はまだ若いゆえ、命だけは助けてやろう。」
- 「ただし、今夜のことを誰にも話してははならぬ。」
- 「もし約束を破ったならば、その時は命はないものと思え。」
- そう言い残すと、女は姿を消しました。
- 翌年、茂吉はお雪という娘と出会います。
- 驚いたことに、彼女はあの雪女にそっくりでした。
- 二人は恋に落ち、やがて結婚しました。
- お雪は素晴らしい妻であり、優しい母親でもありました。
- 夫婦の間には子供も授かり、幸せな日々が十年ほど続きました。
- 不思議なことに、お雪は少しも年を取りません。
- ある雪の夜のことです。
- 茂吉は妻の美しい横顔を見て、ふとあの吹雪の夜を思い出しました。
- 彼は固い約束を忘れ、妻に語り始めました。
- 「実は昔、お前にそっくりな雪女に会ったんだ。」
- その途端、お雪の表情が一変しました。
- 「その雪女は、私です。」
- 「あの時の約束を、なぜ破ったのですか。」
- 彼女の体から冷たい気が立ち上ります。
- 「約束通り、あなたの命を奪うべきですが…」
- 「子供たちのことを思うと、それはできません。」
- 「子供たちを、どうか大切に育ててください。」
- 次の瞬間、彼女の体はすっと溶けていき、
- 白い霧となって消えてしまいました。