Folk tales · Section 1

魂の桜

むかしむかし、あるところに、 心優しい侍が住んでいました。

Level: N2 · 36 sentences

Transcript

  1. むかしむかし、あるところに、
  2. 心優しい侍が住んでいました。
  3. それは愛媛県での話です。
  4. 彼の広い庭には、
  5. 一本の古い桜の木がありました。
  6. その木は、何百年も生きてきたと言われていました。
  7. 侍は、その桜の木を
  8. 自分の命のように大切にしていました。
  9. 毎年春になると、
  10. 木は信じられないほど美しい花を咲かせてくれました。
  11. その景色を見ることが、
  12. 侍の一番の楽しみだったのです。
  13. しかし、ある年のことでした。
  14. あんなに元気だった桜の木が、
  15. 急に元気がなくなってしまったのです。
  16. そして、とうとう枯れてしまいました。
  17. 侍は、深く悲しみました。
  18. 毎日、枯れた木の前で
  19. 涙を流すばかりでした。
  20. 「もう一度、あの花が見たい。」
  21. 彼は心からそう願いました。
  22. そして、ある決心をしました。
  23. 「私の命の代わりに、
  24. この木を生き返らせてください。」
  25. 彼はそう祈ると、
  26. 桜の木の下で自らの命を絶ちました。
  27. すると、不思議なことが起こりました。
  28. 侍の魂が、光となって
  29. 桜の木に溶け込んでいったのです。
  30. それは、厳しい冬の日のことでした。
  31. 周りの木々が雪をかぶっているのに、
  32. その桜の木だけが花を咲かせ始めました。
  33. それは、今まで見たこともないほど
  34. 見事で美しい、満開の桜でした。
  35. 侍の深い愛情が奇跡を起こしたと、
  36. 人々は今でも語り継いでいます。