Folk tales · Section 1
魂の桜
むかしむかし、あるところに、 心優しい侍が住んでいました。
Level: N2 · 36 sentences
Transcript
- むかしむかし、あるところに、
- 心優しい侍が住んでいました。
- それは愛媛県での話です。
- 彼の広い庭には、
- 一本の古い桜の木がありました。
- その木は、何百年も生きてきたと言われていました。
- 侍は、その桜の木を
- 自分の命のように大切にしていました。
- 毎年春になると、
- 木は信じられないほど美しい花を咲かせてくれました。
- その景色を見ることが、
- 侍の一番の楽しみだったのです。
- しかし、ある年のことでした。
- あんなに元気だった桜の木が、
- 急に元気がなくなってしまったのです。
- そして、とうとう枯れてしまいました。
- 侍は、深く悲しみました。
- 毎日、枯れた木の前で
- 涙を流すばかりでした。
- 「もう一度、あの花が見たい。」
- 彼は心からそう願いました。
- そして、ある決心をしました。
- 「私の命の代わりに、
- この木を生き返らせてください。」
- 彼はそう祈ると、
- 桜の木の下で自らの命を絶ちました。
- すると、不思議なことが起こりました。
- 侍の魂が、光となって
- 桜の木に溶け込んでいったのです。
- それは、厳しい冬の日のことでした。
- 周りの木々が雪をかぶっているのに、
- その桜の木だけが花を咲かせ始めました。
- それは、今まで見たこともないほど
- 見事で美しい、満開の桜でした。
- 侍の深い愛情が奇跡を起こしたと、
- 人々は今でも語り継いでいます。